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紙本大曼陀羅図(円龍寺蔵)
藤春山円龍寺は,日蓮宗妙顕寺派の寺院で郡内唯一の日蓮宗寺院である。
円龍寺に伝わる大曼陀羅図は、江戸時代のものと見られ、紙本・軸装で縦94.4cm、幅51.1cm。全体が燻され、特に上部の損傷が激しい。
円龍寺に伝わるものは、中央に「南無妙法蓮華経」の文字とその下に日蓮の名と花押が記されている。、釈迦仏と多宝如来が主題の両側に配され、その脇に四依菩薩、その下に四菩薩、十羅刹女と鬼子母神、伝教・天台の両大師、八幡菩薩と天照大神と続く。四方には四天王を配し、両外に愛染明王と不動明王を梵字で表す基本形に加え、大迦葉尊者や帝釈天など13の神仏、人師が配置されている。
大曼陀羅は十界曼陀羅とも呼ばれ、法華経の世界を表象したもので、絵ではなく文字によって表現されているのが大きな特徴で、本尊として規定されるものである。全体に見られる燻の跡が、本尊として熱心に勤行されていたことを物語っている。